
ビックコミックスピリッツで連載中の魚豊先生の『チ。-地球の運動について-』第2巻の感想です。
第5話
1巻のラストでラファウの残した調査記録を見つけ出した人達が出てきました。
冒頭でこの世界の価値観が少し変わっているのが示されてますね。
前までは地球は宇宙の中心である。
今回は地球は宇宙の底である。何故なら重力によりモノが地球に落ちるがそれは宇宙の底が地球にあるからだという考えから。
まだ重力というモノは考えられていないのかな?というかんじです。
全体的にマイナス思考になっている世の中になってます…
オクジーという表紙にも描かれている臆病な人物が主人公です。
そしてその相棒であり先輩のグラス。
彼らは代闘士という代理で人と決闘をする職業で多くの人を殺しています。
そんな職業に絶望し、早く天国に行きたいと願うオクジーにグラスはある希望を見つけたという。
それが火星の観測記録です。
何故火星?これが地動説に関わってくるのでしょうか。全然知識がないのでわからない…
そして最後にフードを被った異端者が出てきましたがアレを身に付けているッ!!
フベルトからラファウへ受け継がれたあのボールのペンダントをッ!!
第6話
固定された星座の中を動く星、火星の軌道を記録すれば穢れた大地である地球から天体という神々の高貴な領域を観察する事が出来る。
この地球は完璧観測の特等席だから人も地球も捨てたものではないと言う。
だから火星観察を希望と謳ったわけですね。
しかし火星の軌道は逆戻りしてしまい希望は潰えました。
そしてこのことを知っていたような口ぶりの飲み屋のおじさんは何者なのでしょうか?
そんなグラスとオクジーは異端者の見張りを任されます。
ああ!!遂に接触してしまいます!!
しかもその場にはノヴァクも一緒に!!
第7話
異端者がグラスに刺さる言葉を放ち結果的に異端者の手縄を斬って解放しました。
まず、天国の存在に疑問を投げかけましたね。
異端者の言っていたアテナイの老人とナザレの青年。
アテナイの老人の方はわからなかったんですがナザレの青年はイエスの事ですね。
“人は悲劇を肥やしに、時に新たな希望を生み出す。”
C教も最初は希望だったのでしょうね。
希望を与えるため天国の存在を謳った。
しかしそれが今や絶望となっているわけです。
“人類は正面から向き合うべきだ。
麗しの天国なぞ、ないのかもしれないということに。”
“やめろと頼んでるだろ!!”
“だがこの地球は、天国なんかよりも美しいということに。”
ラファウの場合は合理的=美しいという価値観があり地動説の美しさを証明しようとしました。
しかし今回は中心=底辺という価値観で地球は宇宙の中心(底辺)で天動説が信じられています。
穢れている地球を美しいと証明するためには地球は宇宙の中心(底辺)ではないと証明しなければならない。
だから地動説を証明するんですね!!
地動説を証明する理由がその時代、キャラの価値観によって違いますが共通するのは“美しい”ということ。
今生きている世界が素晴らしいと証明するため。
よく考えられていて感心します。
そしてまた好きな台詞が出来ました。
“今夜、君達はこれから少しの間だけ、恐らく人生で初めて、自らの運命を変える挑戦権を得ている。
一生快適な自己否定に留まるか、全てを捨てて自己肯定に賭けて出るか、どちらを選ぶも自由だ。”
ラファウの場合は全てを賭けて自己肯定=合理的なモノは美しいを証明しようとしてましたね。
この作品、言葉の力が凄まじいですね…
第8話
ノヴァクさんの戦闘力は健在…恐ろしい敵ですね…
オクジーがすぐ負けを認めたのはラファウみたいで笑いました。
しかし許してくれないノヴァクさん。
“何度繰り返しても同じ選択をしただろうからこの謝罪は誠実性を欠いている”
グラスさんの謝罪も笑いました。
“もしこの発見のせいで私が死んだとしても、この発見のおかげで私は幸福な命だったと断言できる”
今回の異端者もフベルトもラファウも死に際、満足気でしたね。
「地」。
この見開きは思わず笑っちゃいました。
こんなに面白い漫画に出会えて本当に良かったと。
そして最後のページの遺言で気になる一言がありました。
“尚これにより利益が生じた場合その一割をポトツキに贈与すること。彼の協力は心強かった。”
ポトツキ⁉︎
ラファウの義父です!!
彼はラファウを密告しましたがそれもいつの日か地動説を証明するためだったのでしょうか??
第9話
グラスさんに惑星の話を教えた修道士の名前が明らかになりました。
名は「バデーニ」というらしい。
バデーニは思想上の禁忌を犯して田舎に左遷されたそうです。
これは地動説…ではないか…
地動説なら異端思想で処罰されてますもんね。
オクジーは空を見るのが怖いという。
グラスさんはこの世に希望を感じる心を失ってしまった。
でも愛しい家族と出会えたこの世を肯定したい。
だから火星の観測に希望を感じていたんですね。
しかしオクジーは完全にこの世を諦めてしまっています。
橋が崩れてグラスさんは川に落ちそうになる所をオクジーが助けようとします。
しかしグラスさんがオクジーにこの世界に期待すること。
そして異端者がこの世に見出した希望について語ります。
それは後世に託すこと。そしてグラスさんは川に落ちていきます。
結果的にグラスさんも最後には希望を感じる心を取り戻して満足気に死んでいきました…
第10話
バデーニさん登場です!!
この人が表紙の禿げた人なんですね!!
そして4桁同士の掛け算も一瞬で答えます。
頭良いですね。
しかし規律で定められた以上の勉強をしていた為に懲罰を与えられると言う理不尽を軽々していました。
では何故規律以上の勉強をしていたのか?
自分自身が歴史を動かす瞬間を待っていたそうです。
天動説の星の軌道は奇妙な逆行が生じる。
それでは
“神が、設計を間違えたことになる。”
その後、宇宙に関する禁書を見つけて読もうとするも修道院の長の罠だった。
しかしそれでも読もうとし右目を焼かれたバデーニ。
歴史を動かす瞬間を待ち続けていたバデーニの前に現れたのはオクジーだった。
遂に…真の天才が地動説と出会い歴史を動かしてしまう…!
ここからはバデーニの頭脳だ更に物語が動くんではないでしょうか!!
第11話
バデーニの前に現れたのはオクジー。
バデーニは自分の人生が変わるような情報でなければ話を聞かないと言うも字が読めないオクジーはそもそも内容がわからない。
人に頼まれてやってきたから何故バデーニの元に見せようとしたのかもわからない。
何もわからない。
そして少し残念な話もありました。
グラスさんは火星が逆行したことに絶望していましたがバデーニはそれが当たり前なのだと言う。
惑星という名前もそれからきているというのに…
グラスさん…天文学を履修していれば絶望しなかったんでは…いや、その前に火星に希望を見出さなかったでしょうね。
かつての修道院の長の言葉を思い出し傲慢な態度を少しだけ改めてその情報を見てやることにします。
ただし条件としてオクジーに火星の観測記録をつけさせることに。
オクジーは夜空を見ることにトラウマを持っていますが何とか観察をします。
その理由がオクジーが今こうなったら原因の2人が唯一満足そうに死んでいったからです。
めっちゃ説得力のある理由ですね。
そこに何か希望があるんじゃないかと期待しています。
地動説の資料を見たバデーニは宇宙が変わると言いました。
個人的には歴史が変わると言うと思ったらさらにスケールを超えてきました。
第12話
冒頭バデーニがビックリしすぎて吐いてます笑
そして地球から見て火星が逆行してる謎も説明されました。
オクジーは今まで夜空を見ると穢れた地球を見下ろす神々の眼に見えていましたがこの地動説を聞いて、地球はもしかしたら天界のように高貴かもしれないと聞かされたことにより長年の呪いが解け、綺麗な夜空を見上げる事が出来ました。
オクジーは完全に地動説の美しさに魅せられましたね。
“今日の空、なんか綺麗じゃないですか?”
“その”なんか”を、”絶対”にする方法が、一つだけあるぞ。”
“世界を、動かせ。”
ラファウ篇の1話2話でやったことをオクジーでは一冊分かけてやりました。
ここからは本格的に地動説を検証していくのでしょうか。
次の単行本は4月か…長いなあ…